2024.07.19

令和6年度(2024年)取得のしやすさと加算率がアップした「障害福祉サービス等報酬改定」

2024年4月に施行された障害福祉サービス等報酬改定。その概要については、2024年1月18日に公開したコラム「令和6年度(2024年)障害福祉サービス等報酬改定とは?改定の目指す方向性についてわかりやすく解説」で紹介しましたが、本記事では取得のしやすさと加算率がアップした「処遇改善加算」について詳しく解説します。

当記事は、厚生労働省にて掲載している令和6年度障害福祉サービス等報酬改定についての資料に基づいてコラムを制作しております。

処遇改善加算とは何か?

福祉・介護職員等処遇改善加算とは、障害・福祉サービスに従事する職員の賃金改善のために必要なお金を、国から事業所へ支給する制度のことです。少子高齢化が加速する中、団塊の世代が75歳以上に達する2025年に向けて介護人材を確保するため、安定的な処遇改善を目的として2012年に創設されました。創設後は定期的に改正が行われ、より働きやすく整備された職場づくりを行えるように、要件を満たした事業者に対して資金が支給される形が作られています。

令和5年度までの3つの加算

令和5年度までは以下の3つの加算があり、それぞれの要件や加算率が異なっていました。

福祉・介護職員等処遇改善加算

配分の対象者が福祉・介護職員に限定されていました。

また、就労定着支援の就労定着支援員、自立生活援助の地域生活支援員、就労選択支援の就労選択支援員等は、処遇改善加算の配分対象とされていませんでした。

福祉・介護職員等特定処遇改善加算

職員の経験やスキル・職種によってグループ分けしたうえで、グループごとの配分比率のルールが作られていました。

福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算

加算率の違いや取得における事務作業の煩雑さ、制度の複雑さ、職種間の賃金バランス等を理由に、加算の取得率は事業所全体の7〜8割程度にとどまっていました。

令和6年度(2024年)新処遇改善加算のポイント

2024年6月から開始された新加算「福祉・介護職員等処遇改善加算」の現行制度からの主な変更点は、以下の5点です。

算定要件の再編と統合

制度の複雑さの一因となっていた「福祉・介護職員等処遇改善加算」「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」の要件・加算率が整理され、各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。

職種間配分ルールを統一

2つ目のポイントは、職種間配分ルールの統一です。旧特定処遇改善加算では、職員の経験やスキル・職種によってグループ分けをしたうえでグループごとの配分比率のルールがありました。一方で、旧処遇改善加算にはそのようなルールがなく、配分の対象者が福祉・介護職員に限定されることのみでした。

新加算制度では、「福祉・介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましいが、事業所内で柔軟な配分を認める」とされています。

これにより、福祉・介護職員だけでなく事務員や調理スタッフなど、その他の職種にも配分することができ、その金額もある程度自由に決められるため、事業所ごとに柔軟な運用が可能となりました。また、旧特定処遇改善加算にあったグループごとの配分要件がなくなるため、申請書類も簡素化されます。

加算率の引き上げ

3つ目のポイントは、加算率の引き上げです。旧加算の「生活介護」においては加算率が1.8%〜6.9%でしたが、新加算では5.5%〜8.1%に引き上げられました。

月給改善比率の見直し

4つめのポイントは、月給改善比率の見直しです。現行の加算制度では3つの加算それぞれについて、月給または賞与で配分しつつ、ベースアップ等支援加算に限り、2/3以上を月給配分するという要件が定められています。新加算では、新加算Ⅳに相当する部分の1/2以上を月給配分するという形に変更となります。あくまでも月給配分比率の変更であり、新たな賃上げを行う必要はありません。ただし、現行のベースアップ等支援加算を取得していなかった事業所は、2/3以上を月給配分するという基準もクリアする必要があるので注意が必要です。

対象職種の追加

最後のポイントは、対象職種の追加です。旧加算では対象とされていなかった「就労定着支援の就労定着支援員」「自立生活援助の地域生活支援員」「就労選択支援の就労選択支援員等」が処遇改善加算の配分対象となりました。

新加算への移行時期・経過措置は?

新加算「福祉・介護職員等処遇改善加算」の開始時期は令和6(2024)年6月です。新加算への移行にあたっては、令和6年6月から令和6年度末(令和7年4月)までの経過措置区分として、現行3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今般の改定による加算率の引上げを受けることができるよう、新加算V(1)~ V(14)が設けられています。

参照:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要 ー 厚生労働省

まとめ

処遇改善加算の一本化により事務負担の軽減が期待されますが、新加算への移行にあたって賃金規定の見直しや配分方法の変更、職員や利用者への説明などの負担も生じます。事業所の現状の加算パターンを再確認したうえで、変更のポイントをとらえた確認・見直しを進めましょう。

✓新処遇改善加算の計画書の作成
✓新処遇改善加算の計画書の提出
✓配分対象職員の見直し
✓就業規則等の見直し、改訂
✓雇用契約書の見直し

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