2024.01.18

令和6年度(2024年)障害福祉サービス等報酬改定とは?改定の目指す方向性についてわかりやすく解説

2024年障害福祉サービス等報酬改定に向けて、2023年10月第38回障害福祉サービス等報酬改定検討チームの会議が開催されました。この記事では、障害福祉サービス等報酬改定に関する基本的な知識と、方向性を示す大きな3つの軸について解説します。

障害福祉サービス等報酬改定とは

障害福祉サービス等報酬改定とは、障害福祉サービスに関連する報酬について、社会変化に合わせて、見直しを行うことです。2006年の障害者総合支援法(旧称:障害者自立支援法)の制定以降、障害者への支援は年々拡充しています。障害福祉サービス等の利用者は約150万人、国の予算額は約2兆円となっており、法令が発布された当時の約3倍以上です。

同法は、定期的な改定が行われてきましたが、2024年の改定では少子高齢化による労働の担い手不足、近年の物価上昇など、障害福祉を取り巻く環境に合わせ、事業の報酬体系や指定基準などのさらなる見直しが求められています。今回の改定に向けて、実際の障害福祉サービスの現場にかかわる各関係団体からのヒアリングをもとに意見をまとめ、論点が整理されました。

軸となる3つの論点

2023年8月31日発表時点でまとめられている内容は、以下の通りです。

障害者の地域生活支援

障害者の地域生活支援とは、障害者が地域のなかで、自立した日常生活や社会生活を送れるように支援することです。障害福祉サービス等報酬改定に向けた論議のなかでは、さらに地域共生社会の推進についても大きな項目として取り上げられています。地域共生社会とは、障害の有無にかかわらず、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らしていける社会という意味です。

障害者の地域生活支援とは、障害者が地域のなかで、自立した日常生活や社会生活を送れるように支援することです。障害福祉サービス等報酬改定に向けた論議のなかでは、さらに地域共生社会の推進についても大きな項目として取り上げられています。地域共生社会とは、障害の有無にかかわらず、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らしていける社会という意味です

障害者が地域で生活できるように、入所施設からの地域移行を進め、希望する多様な地域生活を実現する支援を充実させていくことが求められています。具体的には、相談支援の質の向上や提供体制の整備、意思決定支援の推進、障害者ピアサポートの取り組みの促進などを行うことで、障害者のエンパワメント(自立した生活を送るための力)を促進していきます。

例えば、グループホームによって一人暮らしの希望を叶えたり、障害者の意思決定を尊重できる環境づくりを行ったりするといった具合です。より個人の人間としての暮らしに重点が置かれています。障害者支援施設の役割を踏まえつつ、地域の事業者へ知識の還元や地域移行の促進に向けたさまざまな方策が検討されます。

また、診療報酬や介護報酬の同時改定を利用した、医療と福祉の連携強化を図ることも可能です。障害の重度化や高齢化に対応した支援を検討し、多様な障害特性に応じた保健・医療、福祉、その他の施策の連携を促進していきます。さらに、医療的ケア児の成人期への対応や、障害者支援施設と医療機関の連携強化が検討されています。

障害の重度化や高齢化に対応した支援を検討するためには、診療報酬や介護報酬の同時改定が大きなポイントです。障害者支援施設と医療機関の連携強化などを行うことで、障害者の年齢や症状の変化のなかでも、切れ目ない支援を実現することが可能となります。

さらに、精神保健福祉法改正に基づいた地域包括ケアシステムの構築推進です。2024年の改正では、医療機関における虐待防止の措置の義務化や虐待を発見した者から都道府県等への通報の義務化が盛り込まれています。これに関連して本改定においても、医療と相談支援の連携を促進し、退院支援や虐待防止に対する方策の検討がなされます。

社会変化に即した障害児・障害者のニーズへの対応

障害児への専門的で質の高い支援体制を構築するため、児童発達支援センターの役割強化や支援の質の確保を検討します。発育段階における障害児教育や発達支援は、障害者のその後の人生にかかわる重要なポイントです。

また、女性の就業率上昇などに伴う利用者の家族のニーズへの対応、個々の特性に合わせた支援のための関係機関の連携強化も、現代社会における障害福祉サービスに求められる課題です。障害者とその家族をサポートし、誰もが安心して暮らせる社会にするためには、孤立させないための取り組みが求められます。

さらに、障害者の社会参加を図るため、利用者自身の就労の多様化に対応し、障害者の就労支援施策と雇用施策の連携を強化することも議題の一つです。単一的、画一的なものとはせず、障害者の希望や能力に応じた就労をサポートする新しいサービスの検討が望まれます。

具体的には、定着支援や継続時の賃金向上、就労を選択できる仕組みの創設など、社会のなかで現実的に障害者が活躍できる方向性を目指します。

高い質を維持しながらの持続可能な障害福祉サービスの実現

障害福祉サービスが拡充するなかで、大きな課題となっているのが物価高騰や賃金上昇、人材確保への対応です。サービス品質の維持、経営の持続可能性を図るうえでは、早期の状況改善が望まれます。今回の改定においては、上記と関連した障害福祉サービスの予算額と制度に関する公平性を確保するための、方策について論議が進んでいます。

加えて、人材確保の必要性を考慮し、現場におけるICT活用や業務効率化の推進が図られ、サービス提供事業者や自治体の事務・手続きの標準化と合理化が検討されているのが現状です。具体的には、食事提供体制加算など長期化している経過措置への対応、情報公表制度を含むサービスの質の確保、障害者虐待防止の方策の検討などを通じ、障害福祉サービス全体における品質向上と公正化が図られます。

収集された意見をもとに現実に即した障害福祉サービスの見直しが行われる

障害福祉サービス等報酬改定は、全員参加のより良い社会を実現するために実施される方針および具体的な方策の見直しです。個々の特性や状況を尊重し、適切な支援が受けられる社会であること、またサービスにかかわる事業者による持続可能な経営が、今改正の大きな焦点となります。

今回紹介した内容は、2024年の障害福祉サービス等報酬改定に向け、今後も議論が進められます。検討チームによる議論は、随時下記の公式ページで確認できます。

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