ゼロタッチキッティングとは、インターネットを経由してキッティングを行う仕組みのことです。企業の業務負担を軽減しつつ、キッティングを自動化できるため、近年、新たなキッティング技術として注目されています。
本記事では、ゼロタッチキッティングとはどのようなものなのか、メリットや注意点も含めて解説します。ゼロタッチキッティングの導入を検討している方やキッティング方法に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
ゼロタッチキッティングとは
ゼロタッチキッティングについて知るためには、まずは基本的な知識を押さえなければなりません。ここからは、ゼロタッチキッティングの特徴や他の手法との違いを解説します。
ゼロタッチキッティングとは?
ゼロタッチキッティングとは、クラウド上にあらかじめ登録されたデバイスの設定や情報に基づき、一斉にキッティングを行う仕組みです。インターネットに接続するだけで、IT担当者が手を加えることなくキッティングを自動化できるため、キッティング業務の負担を大幅に軽減できる方法として期待されています。
従来の主なキッティング手法
従来の主なキッティング手法には、以下のようなものがあります。
手作業
手作業のキッティングでは、すべての端末を1台ずつ設定します。手元にパソコンがあればすぐに作業できる点や複雑な設定・調整がしやすいことがメリットです。
しかし、複数台を作業するには多くの時間と労力が必要であり、台数が多くなるほど設定ミスや作業品質のムラが生まれやすくなります。また、1台あたりの単価も高いことが特徴です。
クローニング
クローニングとは、キッティングのひな形となるマスターPC(マスターイメージ)を作成し、別の端末に複製する手法です。複数台の端末を一度にキッティングできるため、キッティング作業の負担を大幅に軽減できます。同じ設定内容を複製することで、作業品質を均一にできることもメリットです。
ただし、マスターPCの作成に時間がかかり、場合によっては数万~数十万円の費用が必要になります。
アウトソーシング
キッティング作業を効率化する方法としては、外部の業者にアウトソーシングすることも効果的です。業者によっては、セキュリティ対策やIT資産管理台帳の記入も代行してくれる場合があり、自社の業務負担を大幅に軽減できます。
一方で、依頼する作業内容やサービスによっては、コストが高くなってしまう可能性があります。それぞれで得意とする作業や対応できる端末も異なるため、自社に合った業者を選ぶことが大切です。
代表的なゼロタッチキッティングの「Windows Autopilot」
代表的なゼロタッチキッティングのサービスとしては、「Windows Autopilot」が有名です。Windows Autopilotとは、マイクロソフト社が提供しているツールで、WindowsOSのデバイスであれば簡単にキッティングを自動化できます。新規デバイスと既存デバイスの両方に対応しており、必要に応じて設定のリセット・再セットアップが可能です。
必要な環境
Windows Autopilotを利用するには、次のような環境が必要です。
- Windows Autopilot対応のデバイス(Windows10以降の製品)
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)
- Premium P1・Microsoft Intune
まずは自社で使用しているデバイスのOSを確認し、上記のライセンス要件、ネットワーク要件を満たしているかを確認しましょう。
ゼロタッチキッティングが注目されるようになったのはなぜ?
ゼロタッチキッティングが注目され始めた背景には、マイクロソフト社がWindows10の発表と同時に提唱した「モダンマネジメント」というものがあります。モダンマネジメントとは、今後IT機器には「管理者のきめ細やかな対応による運用」と「ユーザー主導の管理・自動化」が求められるという考え方です。
ゼロタッチキッティングは、このモダンマネジメントの考え方に合致するキッティング技術であり、従来かかっていたキッティング作業の手間と工数を大幅に軽減できます。また、近年におけるリモートワークの増加や多様な働き方の推進により、出社しなくても手軽に設定ができるゼロタッチキッティングの必要性が増していることも、理由の一つです。
ゼロタッチキッティングのメリット
ゼロタッチキッティングを利用するメリットには、次のようなものがあります。それぞれ詳しく確認しましょう。
デバイス導入の負担が軽減される
ゼロタッチキッティングの大きなメリットは、デバイス導入の負担が軽減されることです。従来のキッティング方法では、端末を1台ずつ開封・設置して、細かい手順に沿って作業が行われていましたが、ゼロタッチキッティングではこれらの作業が必要ありません。ゼロタッチキッティングは、手元にデバイスがなくてもクラウド上で設定が完了するため、ユーザーに端末が届いた時点ですぐに業務を開始できます。担当者の負担が大幅に軽減されることで、情報システム部門、さらには会社全体の業務も効率化できるでしょう。
キッティングの94%が自動化した事例もあり
ボーリングマシンなどの開発を手がける鉱研工業では、ゼロタッチキッティングの導入により、本来必要なキッティング作業の94%を自動化することに成功しています。さらに、ゼロタッチキッティングの実施後、Windows Updateの制御やMicrosoft 365の活用も効果的に行えるようになったそうです。こうした事例があることから見ても、ゼロタッチキッティングは、大規模なキッティングにも十分に対応できる技術といえるでしょう。
アカウント管理やデバイス管理の
負担が軽減される
ゼロタッチキッティングは、アカウントやデバイスの管理もクラウド上で一括管理できるため、IT資産管理の負担を軽減したい場合にも効果的です。また、場所や環境を問わずにデバイスの管理が可能になることから、リモートワークにも適しています。
コストの削減
従来のキッティング手法では、デバイスの作業場所や保管場所が必要であったものの、クラウド上で設定が完結するゼロタッチキッティングなら、場所の準備も必要ありません。また、キッティング作業に人材を割く必要もなくなるため、設備費や人件費の大幅カットが実現できるでしょう。
ゼロタッチキッティングの注意点
従来のキッティング手法に代わる画期的なゼロタッチキッティングでも、注意点が存在します。ゼロタッチキッティングのメリットを最大限に得るためにも、しっかりと確認しておきましょう。
設定が一律
ゼロタッチキッティングを利用する際は、設定が一律である点に注意しなければなりません。クラウド上の設定に基づいて一斉にキッティングを行うため、個々の設定や調整は別に行う必要があります。なかにはインストールできないアプリケーションもあるため、個別の設定ができる担当者を用意しておくなど、キッティング後の体制を整えておくことが大切です。
場合によってはコストが高くなる
ゼロタッチキッティングではクラウドを利用するため、台数分のサブスクリプション契約が必要です。依頼料や場所代がかからない点においてはコストが安く済みますが、作業台数が多い場合は運用コストが大きくなる可能性もあることを理解しておきましょう。
まとめ
ゼロタッチキッティングを導入すれば、長年情報システム部門を悩ませていたキッティング作業の負担を大きく軽減できます。だたし、ゼロタッチキッティングを行う際には、自動化できることとできないことがあるため、それをカバーする人材や設定を行う技術が必要になるでしょう。特に、企業においては個人情報や機密情報を多く扱うため、セキュリティ設定の漏れやミスがないように注意しなければなりません。キッティングサービスも併用するなどして、安全で快適な業務環境を準備しましょう。
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