2024.05.17

令和6年度(2024年)新加算で何が変わる?処遇改善加算の変更ポイントと事業所がすべきことを確認

2024年4月に施行された介護報酬改定。その概要については、2023年12月20日のコラム「令和6年度(2024年)介護報酬改定に向けて何をすればよい?スケジュールや変更ポイントを併せて確認」で紹介しましたが、本記事では介護報酬改定の柱のひとつである「処遇改善加算」について詳しく解説します。

処遇改善加算とは何か?

処遇改善加算とは、介護業務に直接従事する職員(介護職員)の賃金改善や職場環境の整備のために必要なお金を、国から事業所へ支給する制度のことです。少子高齢化が加速する中、団塊の世代が75歳以上に達する2025年に向けて介護人材を確保するため、安定的な処遇改善を目的として2012年に創設されました。創設後は定期的に改正が行われ、より働きやすく整備された職場づくりを行えるように、要件を満たした事業者に対して資金が支給される形が作られています。現行の制度では、介護職員処遇改善加算によって施設に支給されたお金を、どのように職員に支払うのかは、各施設や事業所に一任されており、とくに支払い方法に決まりはありません。毎月の給与として支払うこともでき、ボーナス等の一時金として支払うことも可能です。支払いの対象は「介護職に従事する介護職員」とされており、基本的にほぼすべての介護職員が支払いの対象となっています。

令和6年度(2024年)新処遇改善加算のポイント

令和6年度(2024年)新処遇改善加算のポイント

2024年6月から開始される新加算「介護職員等処遇改善加算」。現行制度からの主な変更点は、以下の4点です。

処遇改善加算一本化

職種間配分ルールの撤廃

職場環境要件の見直し

月給改善比率の見直し

それぞれの変更点について、詳しく見ていきましょう。

処遇改善加算一本化

まずは、最も大きな変更点である処遇改善加算の一本化です。現行の「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つが統合されます。この“処遇改善加算一本化”の背景には、現行の制度自体の複雑さや配分計算の複雑さがあります。一本化することで、事業者の事務負担軽減、利用者による理解の向上、事業者としての柔軟な事業運営の実現などの効果が期待されています。現行の処遇改善加算はⅠ・Ⅱ・Ⅲの3区分、特定処遇改善加算はⅠ・Ⅱの2区分、ベースアップ等支援加算は区分なしなので、申請可能な組み合わせパターンは18通りです。新加算では「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」が統合されるため、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分のみとなり、申請時の複雑さは大幅に軽減されます。

 


職種間配分ルールの撤廃

2つ目のポイントは、職種間配分ルールの撤廃です。現行の特定処遇改善加算では、職員を(A)経験技能ある介護福祉職員(B)一般介護福祉職員(C)その他の職種  の3グループに分け、それぞれの配分比率を1:1:0.5以下にすることが求められています。

新加算制度では、

「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することが望ましいが、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算に見られるような、職種に着目した配分ルールは設けず一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める」

とされています。これにより、現行加算の課題であった職種間での賃金配分のバランスについても、事業所ごとに柔軟な運用ができるようになります。また、特定処遇改善加算におけるグループごとの配分要件がなくなるため、申請書類も簡素化されます。


職場環境要件の見直し

3つ目のポイントは、職場環境要件の見直しです。現行制度の職場環境要件は、6区分にそれぞれ4つの項目があり、処遇改善加算では全体から1項目以上を、特定処遇改善加算では6区分から各1項目以上を選択する必要があります。

新加算では「生産性向上のための業務改善の取組」の区分に含まれる項目を8項目に増やしたうえで、新加算Ⅰ・Ⅱでは6区分から各2項目以上を選択し、かつ生産性向上の区分に限り3項目以上を選択する必要があります。また選択必須項目も設けられています。

なお、急激な要件変更を避けるため、令和6年度中に限り、職場環境要件の実施は猶予されます。


月給改善比率の見直し

最後のポイントは、月給改善比率の見直しです。現行の加算制度では3つの加算それぞれについて、月給または賞与で配分しつつ、ベースアップ等支援加算に限り、2/3以上を月給配分するという要件が定められています。新加算では、新加算Ⅳに相当する部分の1/2以上を月給配分するという形に変更となります。あくまでも月給配分比率の変更であり、新たな賃上げを行う必要はありません。要件を満たさない場合、賞与での配分額を月給に移す措置が必要がある、という趣旨です。ただし、現行のベースアップ等支援加算を取得していなかった事業所は、2/3以上を月給配分するという基準もクリアする必要があるので注意が必要です。

なお、急激な要件変更を避けるため、令和6年度中に限り、上記内容の実施は猶予されます。

新加算への移行時期・経過措置は?

新加算「介護職員等処遇改善加算」の開始時期は令和6(2024)年6月です。新加算への移行にあたっては、令和6年6月から令和6年度末(令和7年4月)までの経過措置区分として、現行3加算の取得状況に基づく加算率を維持した上で、今般の改定による加算率の引上げを受けることができるよう、新加算V(1)~ V(14)が設けられています。

変更のポイントをとらえた適切な対応を

処遇改善加算の一本化により事務負担の軽減が期待されますが、新加算への移行にあたって賃金規定の見直しや配分方法の変更、職員や利用者への説明などの負担も生じます。事業所の現状の加算パターンを再確認したうえで、新加算のどの区分に該当するのかを早めに確認しましょう。

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この記事は、厚生労働省の以下の公表されている資料に基づき、2024年度介護報酬改定に関する情報をまとめています。

令和6年度介護報酬改定について 厚生労働省