2023.12.20

令和6年度(2024年)介護報酬改定に向けて何をすれば良い?スケジュールや変更ポイントも併せて確認

2024年4月に、厚生労働省による介護報酬の改定が発表されています。施行されることで、介護サービス提供事業者への大きな影響が予測されます。本稿では、介護報酬改定が行われる理由や新たな制度下での変更点、事業者として求められる対応のポイントについて解説します。

介護報酬改定とは何か?

介護報酬改定は、社会情勢などを考慮し、適切なサービスの提供や介護職員の処遇改善などを目的に行われます。原則3年に1回実施されることとなっており、これまでも都度内容が変更されてきました。

介護報酬とは、「事業者が利用者(要介護者または要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に対して支払われる報酬」です。利用者は、介護負担割合に応じて1~3割の利用料金を支払いますが、事業者はその残りの部分を国や自治体に請求することで事業収入として補完されます。

介護報酬については、介護人材の不足といった背景も含め、常に社会的な話題となってきました。事業所が健全な運営を行っていくためには、正当な報酬を得られなければなりません。現役世代が減少し、少子高齢化が進むなかで、介護保険制度が正しく機能し、持続していくためには社会変化に合わせた見直しが必要となります。

令和6年度(2024年)介護報酬改定のスケジュールと変更ポイント

2024年に予定されている介護報酬改定のスケジュールと主な変更点は、以下のとおりです。

スケジュール

令和3年度(2021年)改定時のスケジュールを参考にした場合は、介護事業者の改定後のサービススタートは4月1日となります。4月分の介護報酬請求締め切りは、5月10日となるため、新制度に合わせた要件を確認することが必要です。上記スケジュールに照らし合わせると、報酬改定に伴うサービス内容の見直し、対応、各種届出などは遅くとも3月末までに完了させておく必要があります

変更ポイント

(1)地域包括ケアシステムの深化・推進
地域の医療と介護を連携させ、高齢者や認知症の方の人間性に配慮したケアを提供するシステムを強化することが指針です。各事業所が孤立することなく、地域全体で介護利用者をサポートする体制を確立することが必要です。

また、昨今急増する災害や感染症への備えを考え、緊急時の体制整備も求められます。各事業所では、高齢者虐待を防ぐための取り組みを進め、利用者の尊厳を保持しながら認知症への対応を向上させることが大切です。

(2)自立支援・重度化防止に向けた対応
自立支援・重度化防止といった介護保険制度の考え方に基づき、高齢者ができるだけ自分で生活できるようにサポートし、重い介護が必要になることを予防するのもポイントです。リハビリテーションや健康に関し、新しく確認された情報をもとに、科学的な介護の進歩を図ります。

(3)良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり
介護人材の不足を解決し、介護サービスの質を向上させるため、働きがいを持たせる職場環境を整えることも重視されているポイントの一つです。今後、増加が見込まれる利用者に対応できるように介護人材の確保とともに離職を回避するための施策検討が求められます。

情報システムや介護ロボットなど、テクノロジーを活用して介護の質を高め、介護職員の負担を軽減する方法の積極的な導入も必要です。他事業所や施設との経営の協働化を図りながら、柔軟な働き方と、サービス提供の実現に向けて取り組むことが求められます。

(4)制度の安定性・持続可能性の確保
介護利用者および事業者双方にとって、より良い状況を提供できるように介護保険制度を長期的に安定させ、すべての世代が信頼できる制度を続けられるようにすることが重要です。サービス提供の現実を考慮して評価の適正化を図り、報酬の体系を合理化することで、社会的な変化に対応し、公正な介護制度の存続が実現できます。

介護報酬改正への対応

改正内容は、福祉用具やケアプラン費の見直し、小規模法人の大規模化推進、多床室の室料負担見直し、人員基準の見直しなど、詳細かつ多岐にわたるため、ここでは大きなポイントを解説します。

業務継続計画(BCP)

各事業所では、災害や緊急時にあっても事業を継続させるための計画書策定が必要です。BCP(事業継続計画)の策定は、2021年の介護報酬改定において運営基準として組み込まれ、3年間の移行期間が設けられていました。

2024年4月1日までには、すべての介護事業者についてBCP策定が必要です。BCPの策定では、自然災害対策および感染症対策を軸とし、利用者の人数や運用体制に応じた有事の際の対応が求められます。

人材不足への対応

働く環境の整備やICTシステム、介護ロボットなどのテクノロジーの活用を行い、業務負担を軽減しながらサービス向上を目指すことが求められます。コミュニケーションの円滑化や適切な業務配分、福利厚生の充実など働きやすい環境の提供を行い、実質的な業務負担を減らすためのデジタル化、IT導入を進めていきます。

科学的データに基づく介護サービスの展開

科学的介護情報システム(LIFE)の活用と従業員への教育、知識スキル育成を行うことにより、介護人材に対する科学的な知識の浸透を図ります。認知症介護基礎研修受講を推進し、個人スキルの底上げをすることで、現場の介護品質向上につながります。

事業経営の大規模化・協働

介護を取り巻く厳しい環境に対し、単一事業所だけではなく協働して取り組むことで、より効率的運用が可能となります。また、ある程度の事業規模への拡大は、さまざまな物品やサービスの購入においてスケールメリットが実現でき費用の削減をしやすくしてくれるでしょう。人材雇用の面においても、労働者側と経営側双方に得られるメリットがあると考えられます。

介護報酬改定のポイントをとらえた適切な対応を

2024年の介護報酬改定では、「高齢者の増加と現役世代の減少」という社会的な変化に対応するためのさまざまな方針が打ち出されています。各事業所は、自組織の現状を正しく把握したうえで改定に備えた準備を進めていくことが大切です。

ウチダエスコでは、福祉・介護ICTで地域包括ケアシステムと質の高いサポート体制の構築を実現するサービスを提供しています。介護報酬改定に際して事業所の運用体制にお悩みの場合は、ぜひご相談ください。

令和6年度介護報酬改定に向けての議論は、厚生労働省の公式ページで資料や議事録が順次公開されています。以下のページでご確認ください。

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