2023.06.15

IT導入補助金とは?介護・障害関連事業者が活用に向けて知っておきたい情報を解説

介護や障害関連の事業においても、業務の効率化にはIT技術の利用が不可欠です。しかし、各種デバイスをはじめとする機器類やデータ統合を行うシステムの導入には、大きな負担が発生します。そこで活用したいのが、IT導入補助金です。今回は、介護・障害関連事業者が活用できる補助金の内容について解説します。

IT導入補助金の概要

はじめにIT補助金の基本的知識を解説します。

IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金です。

人手不足の解消や業務効率化、および生産性向上を図るためにIT技術を活用したいと考えることも多いでしょう。しかし、コスト的に難しい場合に公的支援を受けることで事業の円滑化が実現します。IT導入補助金では、ITシステムの導入やIT機器の購入、システム開発費用などを幅広く助成してもらうことが可能です。

ニーズに即したITツール導入により経営の強化を図り、事業存続に役立てていきましょう。

IT導入補助金の種類と目的

IT導入補助金の種類には、以下の3つがあります。

・通常枠(A・B類型)
中小企業や小規模事業者等に対して、業務効率化・売上アップをサポートするための補助金です。経営課題や需要に合ったITツールを導入するのに役立ちます。A類型・B類型の違いは、申請するソフトウェアの数です。業務プロセスに関するソフトウェアの導入においてA類型では1プロセス以上、B類型では4プロセス以上(オプション・付帯サービスの導入もあわせて申請することが可能)とされています。また、賃上げ目標などの詳細条件にも違いがあります。

種類 A類型 B類型
補助額 5万~150万円未満
150万~450万円以下
補助率 1/2以内
プロセス数※1 1以上 4以上
ITツール要件(目的) 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること
賃上げ目標 加点 必須
補助対象 ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費

※1:「プロセス」とは、業務工程や業務種別のことです。

セキュリティ対策推進枠
サイバーインシデントによる事業への障害やサイバー攻撃被害を回避し、リスク低減を図るための補助金です。サイバー攻撃により被害を受けることで、供給制約や価格高騰といった社会的なリスクも高まります。セキュリティ対策推進枠では、そうした潜在的リスクを低減するために、補助金を活用し、セキュリティの強化を図ります。

種類 セキュリティ対策推進枠
補助額 5万~100万円
補助率 1/2以内
機能要件 独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス
補助対象 サービス利用料(最大2年分)

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助します。インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進する目的で設定されています。取引に関連するハードウェアにかかる購入費用や、クラウド使用料も補助対象です。

介護施設や障害者施設でIT導入補助金の活用を考える場合は、活用用途の広い「通常枠」から検討するのがおすすめです。以降では、IT導入補助金の内容をさらに詳しく解説していきます。

種類 デジタル化基盤導入類型
補助額 ITツール
(下限なし)~350万円
内、~50万円以下部分 内、50万円超~350万円部分
機能要件※1 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上
補助率 3/4以内 2/3以内
対象ソフトウェア 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト
賃上げ目標 なし
補助対象 ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費

※1:該当する機能の詳細はITツール登録要領を参照

ハードウェア購入費 PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円

IT導入補助金の対象事業

IT導入補助金の対象事業者や対象となるツールについて見ていきましょう。

補助対象となる事業者

IT導入補助金の対象者は、中小企業や小規模事業者等と定められています。この場合の中小企業等の定義は、サービス業であれば資本金5,000万円以下、常時使用する従業員の数が100人以下です。また、医療法人や社会福祉法人の場合は300人以下とされています。

補助対象となるツール

IT導入補助金の補助対象となるツールは以下の通りです。

・介護保険請求業務や給与計算など会計業務の効率化を図るITツール
・ケア内容の記載にかかる時間の削減のため、本部への報告やスタッフとの情報共有に関するITツール
・上記を操作するための各種端末
・業務内容に関連するソフトウェアなど

IT導入補助金ではいくらもらえるの?

IT導入補助金で支給される金額は、以下の通りです。

通常枠(A・B類型)

・対象経費

ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費

A類型 (下限なし)~350万円
B類型 150万~450万円以下
補助率 1/2以内

デジタル化基盤導入類型

・対象経費

会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト

補助額 (下限なし)~350万円
補助率 内、~50万円以下部分内、50万円超~350万円部分
3/4以内2/3以内

ハードウェア購入費 PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円
レジ・券売機等:補助額1/2以内、補助上限額20万円

IT導入補助金を介護施設・障害者施設で活用する方法

IT導入補助金を介護施設・障害者施設で活用する際の流れと、活用の事業範囲を解説します。

IT導入補助金活用の流れ

1
導入計画の策定

まずは、IT導入補助金を活用するための導入計画の策定です。導入したいデジタル技術やシステムを選定し、どのように導入するのか、どのような効果が期待できるのかを明確に示します。

2
ITツールとIT導入支援事業者の選定

課題解決に必要なITツールと、それを扱っているIT導入支援事業者を選定します。ただし、申請前に契約してしまうと対象外となるため、注意が必要です。

3
「gBizIDプライム」アカウントの取得

申請に必要となるアカウントを取得します。「gBizIDプライム」アカウントは、助成金申請以外でもさまざまな行政サービスで利用できます。

4
「SECURITY ACTION」の宣言

補助金の申請条件となる独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施するSECURITY ACTIONの宣言を行います。

5
IT導入補助金の申請

先に選定を行ったIT導入支援事業者と相談しながら補助金の申請を行いましょう。IT支援事業者から招待を受ければ「申請マイページ」を利用できるようになります。

6
ITツールの契約

交付決定後にITツールの契約を締結します。

7
実績報告

ITツールの契約、支払いに関する書類を提出します。

8
補助金交付

実績報告書類が承認されたのち、補助金が交付されます。

9
効果の検証

補助金を受けた目的となる「生産性向上や業務改善などが達成できたか」を確認します。補助金交付後は、3年間にわたって実績報告をする業務が生じます。

事務局の手続き

IT補助金の事業活用例

介護システム


クラウド上で介護計画の作成や介護サービス実施記録の入力や集計、サービスの評価などを管理することができるほか、ワークフローや情報共有をオンライン上で実施可能です。介護対象者状況管理や介護計画書作成、履歴管理、行政報告書作成などの機能が搭載されています。

給食管理システム


利用者の食に関するデータを管理するシステムです。食材在庫管理・発注管理や給食管理、栄養ケアマネジメントなどの機能があります。

財務会計システム


事業の会計関連業務を支援するシステムです。請求書作成などの帳票管理、売掛・回収管理機能などがあります。

勤務管理システム


従業員の勤怠管理を支援するシステムです。訪問介護などの外勤も、モバイル連動で出退勤報告が可能となります。労働時間・給与計算といった煩雑な処理を自動化できます。

コミュニケーションツール


社内外での連絡を密に行い、意思の疎通をスムーズに行うためのツールです。グループウェアや社内SNS、チャットツールなどがあります。

介護・障害関連事業の現場負担軽減と業務効率化に向けてIT導入補助金を活用しよう

介護・障害関連事業は、現場の人間力が要となります。しかし、それを取り巻くさまざまな業務においてはIT技術によって効率化できる分野も少なくありません。人手不足で現場にかかる負担を少しでも軽減し、業務の円滑化を図るためにはIT導入補助金の活用に目を向けることが必要です。

特に、統合的にデータを活用・共有できる介護システムは、内的な業務支援だけではなく、サービスレベルの維持にも役立てることができるでしょう。職員の業務負担軽減、効率化に向け、IT導入補助金を活用した介護システム導入の検討が求められます。

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